SRC・RC造マンションの事前調査で注意すべき「隠れたアスベスト」と追加調査の判断基準 | 株式会社テクノアップ・ライズ

SRC・RC造マンションの事前調査で注意すべき
「隠れたアスベスト」と追加調査の判断基準

築38年のSRC造マンション。大規模修繕のため天井点検口を開けたら、図面には載っていない吹付け材が出てきた。
現場からこうした連絡が入るのは、決して珍しいことではありません。
SRC造やRC造のマンションは躯体が頑丈なぶん内側の層が多く、竣工図と実際の施工が一致しないことも少なくありません。
何度も改修を重ねている物件なら、なおさらです。

事前調査の質は、この「見えない部分」をどこまで疑えるかで決まります。

ここでは、マンションの事前調査で見落とされやすい箇所と、追加のサンプリング・分析に踏み切る判断基準を、現場で使える順序に沿って整理します。

なぜSRC・RC造マンションは「隠れたアスベスト」が起きやすいのか

外マンションの事前調査が難しい理由は、建材の種類そのものより「層」にあります。
天井裏、床下、PS(パイプスペース)、DS(ダクトスペース)、エレベーターシャフト。
住戸の内側からは見えない空間がいくつも重なり、そこに断熱材や保温材、耐火被覆が隠れています。
竣工図はあっても、施工中の変更指示が反映されていないことが多いのも厄介な点です。

加えて、マンションは1970年代から2000年代にかけて大量に供給されました。
石綿則第3条第3項第3号が定める「平成18年9月1日以降の着工」に当てはまらない物件が、いま大規模修繕の時期を迎えています。
管理組合に残っているのは竣工図と長期修繕計画が中心で、建材の仕様書や変更指示書まで残っているケースは多くありません。

図面がないから目視で済ませる、のではありません。
図面がないからこそ、確認した範囲と判断の根拠を厚く記録する。
これが実務の出発点になります。

見落とされやすい箇所

優先的に確認したい部位を整理すると、次のようになります。
共通しているのは「仕上げ材の下」「暗所」「図面に副資材として載らない」のいずれかに当てはまることです。

部位 使われ方 見落としの理由
天井裏・梁型 吹付けロックウール(乾式・湿式)、吸音材 点検口から見える範囲が限られる
柱・梁の耐火被覆 SRC造の鉄骨部分を覆う被覆材 仕上げ材の下で目視できない
PS・DS内の配管 給湯管・蒸気管の保温材 扉の奥、暗所で写真が残りにくい
床下・二重床 配管・ダクト、下地材 フローリングを剥がすまで分からない
バルコニー腰壁 成形板、仕上塗材 外装仕上の下、塗膜の厚みの中
EVシャフト・機械室 耐火被覆、吸音材 立入りが制限され、調査が後回しになる
外壁仕上塗材 リシン、ジョリパット等 塗膜そのものに石綿が含まれる場合がある
屋上防水の下地 アスファルトルーフィング 防水層の下で確認できない
住戸内の床 Pタイル、接着剤 撤去時に粉化しやすい
貫通部・目地 シーリング材、パテ 副資材で図面に記載がない

特に厄介なのが、天井裏の吹付けロックウールと配管の保温材です。
点検口から見える範囲だけを確認して「なし」と判断してしまうと、解体が始まってから手が止まります。
住戸内のPタイルと接着剤も同じで、床材そのものより接着剤に石綿が含まれているケースがあります。

図面に「ない」は「使用していない」ではない

石綿則第3条第2項は、解体等の対象となる建築物の「全ての材料」について、設計図書等の文書確認と目視による確認を行うことを求めています。
記載がない材料は「不明」として扱い、目視と、必要に応じて分析で埋める。
これが原則です。

よくあるのは、仕様書に「ロックウール吹付け」とだけ書かれ、石綿含有の有無までは書かれていないケースです。
2006年9月以前の吹付けロックウールには石綿が混ざっていることがありました。
名称が同じでも、含有の有無は別問題だと考えたほうが安全です。

竣工後の改修で追加された建材も、当初の図面には載りません。
増築、間取り変更、外装改修、設備更新。
管理組合や施設管理者へのヒアリングで改修履歴を拾い、図面と突き合わせる作業が欠かせません。

追加調査を判断する5つのチェックポイント

「ここは怪しい」と感じたときに、追加のサンプリングと分析に進むかどうか。現場では次の5つを目安にしています。

  1. 着工日が2006年9月1日より前である(確認できない場合も同じ扱いにする)
  2. 図面と現況が合わない(ボードの層数、下地の有無、仕上の厚み)
  3. 目視できない隠蔽部が残っている(天井裏、床下、二重壁、シャフト)
  4. 過去の改修で建材が追加されている
  5. 分析結果は「不検出」だが、試料の代表性に疑いが残る

5番目は見落とされやすい項目です。
1検体だけ分析して「不検出」だったとしても、その1検体が補修跡の近くであったり、材質の異なる部分をまとめて採取したものであったりすれば、結果の重みは変わります。
分析結果そのものより「どの試料を分析したか」を確認してください。

追加調査の進め方


同じ名称の材料でも、施工時期やロット、部位が違えば別の検体として扱います。
採取時は湿潤化と養生を行い、引きの写真、材料のアップ、層構成の断面をセットで撮影します。


まず定性分析で石綿の有無と種類を確認します。
0.1%前後で判断がつかない場合や、廃棄物の区分を確定させたい場合に定量分析を追加します。
分析しても判断がつかないときは、石綿が使用されているものとみなして措置を講じる道もあります。


採取位置、写真、分析報告書、判断の根拠をセットで残します。
石綿則第3条第7項により、これらの記録は調査終了日から3年間の保存が必要です。
発注者への書面交付と現場への掲示も忘れないでください。

追加調査で見るべきは「石綿があるか」だけではありません。
どの試料を、どこから、何検体採取したか。この前提が崩れていると、分析結果の信頼性も一緒に崩れます。

「みなし」で進めるという判断

石綿則第3条第5項のただし書きでは、分析調査を行わずに「石綿が使用されているものとみなして」労働安全衛生法上の措置を講じる場合、分析調査を省略できるとされています。
費用と工期を抑えられる一方で、作業規制は重くなります。

たとえば天井裏の吹付け材が確認できても、サンプリングのために天井を大きく壊したくない場合。
あるいは、含有の可能性が高いことが明らかな場合。
このようなときは、みなしで作業計画を立てたほうが合理的です。
逆に、部分的な撤去で分析が容易なら、分析して範囲を絞ったほうが結果的に安くつきます。

どちらが得かは、除去する範囲と工期で決まります。

よくある質問

大規模修繕の足場を組む前に、どこまで見ておくべきですか。

足場が掛かると外壁は見やすくなりますが、天井裏やPSは逆に見えにくくなります。
着工前の段階で、共用部の点検口から確認できる範囲と、住戸内に立ち入る範囲を決めておく必要があります。
特に1階住戸と最上階住戸は、下地や天井裏の構造が他階と違うことがあるため、優先して確認します。

管理組合が以前に実施した調査結果を流用できますか。

石綿則第3条第3項第1号により、すでに同等の調査が行われている場合は、その記録を確認する方法で足ります。
ただし、今回の工事範囲と前回の調査範囲が一致しているか、調査者が有資格者か、記録が現行の基準で作成されているかを確認してください。範囲外は追加調査が必要です。

追加調査の費用は誰が負担しますか。

大気汚染防止法では、工事の発注者に調査費用の負担その他調査への協力が義務づけられています。
実際の負担は契約で決まりますが、追加調査が発生する条件と費用の扱いを、着工前に契約書か覚書で明確にしておくほうがトラブルを避けられます。

まとめ

SRC・RC造マンションの事前調査は、図面をなぞる作業ではありません。
躯体の内側に何層も重なる建材のうち、図面に載らないもの、目視できないものをどう扱うかで結果が変わります。

迷ったときの原則はシンプルです。見えないものは見えるまで疑う。
判断がつかないものは、分析するか、みなす。
そして、判断した根拠を残す。この3つを徹底するだけで、解体後の手戻りはかなり減らせます。

追加調査はコストではなく、工事を止めないための保険です。調査の段階で疑っておくほうが、着工後に止まるより、はるかに安く済みます。

 

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