2006年(平成18年)以降の建物はアスベスト調査不要?「着工日」の確認方法とエビデンスの残し方 | 株式会社テクノアップ・ライズ

2006年(平成18年)以降の建物はアスベスト調査不要?
「着工日」の確認方法とエビデンスの残し方

「2006年以降の建物だから、調査は不要ですよね」。
現場でこう言われることがあります。
半分は当たっていて、半分は危うい。
法律が定めているのは「2006年9月1日以降の着工」であり、しかも「調査しなくてよい」わけではありません。

正確に言えば、着工日を設計図書等の文書で確認する方法に置き換えられる、という扱いです。
この違いを理解しておかないと、報告漏れや説明不足につながります。

法律上の基準は「2006年9月1日以降の着工」

石綿則第3条第3項第3号は、建築物または工作物の新築工事の着工日が平成18年9月1日以降である場合、その着工日を設計図書等の文書で確認する方法によって事前調査を行えるとしています。
書面調査も目視も分析も丸ごと省略できる、という規定ではありません。

ここが実務で一番誤解される点です。
置き換わるのは「調査の方法」であって、記録の作成、現場への掲示、発注者への説明、そして規模要件を満たす場合の行政への報告は、そのまま残ります。

「2006年以降」という曖昧な言い方も危険です。
2006年1月から8月に着工した建物は、この規定の対象外です。
境界は9月1日。年だけで判断すると、ちょうど境目の物件を取りこぼします。

なぜ9月1日なのか

2006年9月1日から、石綿を0.1%を超えて含有する製品の製造、輸入、譲渡、提供、使用が原則として禁止されました(労働安全衛生法施行令の改正)。
建築基準法でも、吹付け石綿などの使用が規制されています。
石綿則の規定は、この禁止を前提に、着工日の確認で足りるとしたものです。

ただし、禁止の基準はあくまで「新築工事の着工日」です。
在庫として残っていた建材、輸入された建材、工作物、増築部分など、前提が崩れる場面はあります。
建物全体が新しいのか、今回の工事対象部分が新しいのかを分けて考える必要があります。

着工日の確認方法

実務で使える書類を、確実性の高い順に挙げます。重要なのは、竣工日や完了検査日ではなく、着工日が読み取れるかどうかです。

書類 確認できること 注意点
建築確認申請書・確認済証 着工予定日、建築物の概要 申請日と着工日は別物
工事請負契約書 契約日、工期、着工日 着工日が明記されているか確認
工事工程表・施工計画書 実際の着工日 作成日との整合を見る
検査済証 完了検査日 着工日そのものではない
施工図・監理記録 着工日、変更履歴 断片的なことが多い
固定資産税台帳・登記 建築年月日 着工日は分からない

「建築確認申請書には着工予定日が記載されています。
確認済証や検査済証しか手元にない場合は、自治体の建築確認台帳を取得する方法があります。
マンションなら管理組合の長期修繕計画や竣工記念誌、施工会社の工事記録が手がかりになります。

竣工年しか分からないときは、工期から逆算して着工日を推定します。
標準的な工期は構造と規模で変わりますが、余裕を見て2006年8月以前と扱うのが安全側です。
推定であることを記録に残してください。

書面で確認できないときは「調査不要」ではない

着工日が確認できなければ、第3条第3項第3号は使えません。
原則に戻って、設計図書等の文書確認と目視による調査を行います。
そこで判断がつかなければ、分析調査です。

図面がない、施工会社が倒産した、管理組合に資料が残っていない。
古い建物ほど、この壁に当たります。
施主や施設管理者へのヒアリング、不動産会社の保有資料、自治体の建築確認台帳。
集められるものを集めたうえで、それでも足りない部分を目視と分析で埋めます。

2006年9月以降でも調査が必要なケース

  • 増築・改修で、2006年以前に施工された既存部が工事対象に含まれる
  • 工作物の解体・改修(2026年1月1日以降着工分は有資格者による調査が必要)
  • 輸入建材や在庫材が使われている可能性がある
  • 着工日を誤認している、または書類の日付が実際と合わない
  • 用途変更に伴い、新たに解体する部分が生じる

特に増築は注意が必要です。
建物全体の新築着工日が新しくても、既存部は古い。
工事対象部分ごとに着工日を確認する発想が要ります。

「2006年9月以降なので調査不要」と社内メモに書くだけでは、後から説明できません。どの書類の、どのページで、誰が、いつ確認したか。ここまで残して、初めてエビデンスになります。

エビデンスの残し方

着工日を確認したら、次のものをセットで残します。

  • 着工日が記載された書類のコピー(該当ページに印をつける)
  • 確認した者、確認日、判断の内容
  • 工事範囲と建物全体の関係を示す図面
  • 報告システムの入力控え、受付番号
  • 発注者へ説明した書面の写し

石綿則第3条第7項により、これらの記録は調査終了日から3年間の保存が必要です。
行政の立入りや元請の監査で見られるのは、結論ではなく判断の過程です。

報告は「石綿なし」でも必要

規模要件を満たす工事では、特定建築材料の有無にかかわらず、事前調査の結果を報告します。
着工日の確認だけで済ませた場合も同じです。
「調査を簡略化したから報告も不要」ではありません。

報告は原則として石綿事前調査結果報告システムから行い、工事の着工前までに終わらせます。
条文上の期限は「遅滞なく」ですが、着工後に出すと義務違反になります。

よくある質問

築20年の建物でも、事前調査は必要ですか。

2006年9月1日以降の着工であれば、着工日を書面で確認する方法で足ります。ただし、増築部や改修部、工作物が含まれる場合は別に判断します。また、記録の保存、掲示、規模要件を満たす場合の報告は必要です。

着工日がどうしても分からない場合はどうしますか。

2006年8月以前として、書面調査と目視による調査を行います。目視で判断できなければ分析です。推定に頼った場合は、その旨と根拠を記録に残してください。

報告をせずに着工した場合、どうなりますか。

報告対象の工事で報告を怠ると、大気汚染防止法第35条第4号により30万円以下の罰金の対象となります。行政指導や工事停止につながることもあります。気づいた時点で作業を止め、自治体と労働基準監督署に相談するのが現実的です。

まとめ

法律の基準は「2006年9月1日以降の着工」。
年単位の記憶で判断すると、境目の物件を取りこぼします。

着工日が確認できれば調査方法を置き換えられますが、記録・掲示・報告は残ります。
ここをセットで覚えておきたいところです。

確認した書類、確認した者、判断の内容。
この3点を残すことが、後から説明できる調査になります。

 

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